日本株の候補を毎日すべて目視で確認するには時間がかかります。この記事では、対象市場と数値条件を決めて、確認する銘柄を絞る手順を整理します。
スクリーニングは、指定した条件と取得できるデータの範囲で候補を抽出する作業です。対象外の市場、更新前のデータ、条件では表せない変化もあるため、有望な銘柄を漏れなく拾える仕組みではありません。
ただし、スクリーニングは「発見」であって「判断」ではありません。条件を通過した銘柄をそのままエントリーするのは事故のもとです。
スクリーニングからエントリーまでの全体像はこうなります。
- スクリーニングで候補を発見する(この記事)
- 条件の設計根拠を理解する → スクリーニング条件の設計|ロングとショートで変える理由とパラメータの決め方
- 監視リストで育てて、エントリーにつなげる → 監視銘柄リストの作り方|スクリーニングからエントリーまでの「待ち方」
この記事では1の「具体的な操作と手順」に集中します。以下の数値は操作説明用の例Aで、著者の現在の実運用設定や、利益・勝率が検証済みの推奨値を示すものではありません。日足の確定足を使い、RSIは14期間、移動平均線は終値、ATR%はATR(14)÷終値×100として読みます。比較時は対象市場、取得日時、株式分割などの調整条件もそろえて記録してください。
スクリーナーはTradingViewの株式スクリーナーを使う
スクリーニングツールは複数ありますが、この記事ではTradingViewの株式スクリーナーを前提にします。
TradingViewの株式スクリーナーでは、市場や銘柄種別、出来高、EMA・SMA・RSIなどの条件を設定できます。公式ヘルプにはATR%フィルターも案内されています。表示項目、設定可能な期間、利用範囲は実際の画面と契約プランで確認し、この記事の例と一致する設定を選びます。
最初にやる基本設定
まず以下の対象条件を設定します。保存した設定を使う場合も、実行前に対象市場、時間足、各指標の期間と更新時点を確認してください。
マーケット:日本。 初期状態ではアメリカが選択されていることがあります。
シンボルタイプ:普通株のみ。 ETFやREITを除外します。これを設定しないとスクリーニング結果にETFが混在して、銘柄選定がブレます。
取引所:TSE(東京証券取引所)。この記事の例では対象範囲をそろえるため東証に限定します。取引所だけで流動性を判断せず、個別銘柄の出来高・売買代金・板も確認します。
ロング候補のスクリーニング手順
ロングで探しているのは「上昇トレンドの中で押し目をつけている銘柄」です。この形を数値フィルターに翻訳していきます。
Step1:流動性の目安で候補を絞る
最初に出来高でフィルタをかけます。
例Aの出来高条件:直近20営業日の平均出来高が10万株以上。画面の平均期間が異なる場合は同じ条件として扱わず、期間を合わせて確認します。
出来高が少ない銘柄では、希望する数量や価格で売買できなかったり、想定より不利な価格で約定したりすることがあります。平均出来高だけでなく、発注予定数量、当日の売買代金、売買気配の差、板の厚さを確認します。
10万株は説明用の閾値で、安全な最低ラインではありません。30万株へ上げれば通過銘柄は減りますが、損失やスリッページを防げるとは限りません。銘柄の価格と自分の発注数量を含めて検討します。
Step2:移動平均線の順序で候補を絞る
次に、同じ日足時点の移動平均線の値を比較します。
EMA20 > EMA50 > SMA200
EMA20の値がEMA50より高く、EMA50の値がSMA200より高い、という上下の順序です。この条件だけでは、各線が上向きかどうかや、今の株価がSMA200より上かどうかは決まりません。傾きや価格の位置は別に確認します。
スクリーナーでEMA20・EMA50・SMA200の期間と日足をそろえます。画面で移動平均同士を比較する条件が設定できない場合は、各値を表示して確認し、別の条件で代用したものを同一設定とは扱わないでください。
例Aのロングでは、上記の順序に加えて「終値がSMA200より上」を確認します。これはこの記事で選ぶ候補の範囲であり、SMA200より下の銘柄を買う手法すべてを否定する条件ではありません。
Step3:RSIで確認する候補を絞る
次にRSIで候補を絞り、押し目の形かどうかをチャートで確認します。RSIの値だけでは、押し目や反転を確定できません。
RSI(14):35〜55の範囲
35〜55は例Aで試す帯域です。RSIは最近の値上がりと値下がりの大きさをもとにした指標で、価格が何%下がったかを直接示すものではありません。70や30も一般的な目安であり、帯域の通過だけで押し目、企業の異常、次の反転を判断しないようにします。
価格とEMA20の距離も確認します。ただし「価格がEMA20に交差」と「EMA20の近くにある」は別の条件です。近さを数値化する場合は、終値とEMA20の差の絶対値をEMA20で割った比率などを使い、許容幅を先に決めます。この例では近接幅を固定していないため、追加の目視確認として扱います。
Step4:ボラティリティフィルタで「値幅がある銘柄」だけ残す
最後にATR(Average True Range)でフィルタします。
例AのATR%条件:ATR(14)÷終値×100が1.5%以上。
ATRは最近の値動きの大きさを見る指標で、上がる方向や将来取れる利幅を示すものではありません。1.5%は例Aの下限で、スイングに適する普遍的な境界ではありません。上限を設けていないため、大きな変動の銘柄も通過します。損切り想定、発注数量、費用を別に検討します。
株価1,000円でATR15円ならATR%は1.5%、株価10,000円でATR15円なら0.15%です。TradingViewの現行公式ヘルプではATR%フィルターが案内されています。日足・14期間の設定と計算方法を確認して使い、表示値とチャートの条件が違う場合はその差を確認してください。
通過数は市場環境、対象銘柄、取得時点、データ条件によって変わります。「通常20〜50銘柄になる」という実測は本記事では示していません。数が多い場合も、その日の件数に合わせて条件を変える前に、確認時間の上限と変更理由を記録します。候補が少ないことだけで条件が間違いとも判断できません。
条件を比較・検証する考え方はスクリーニング条件の設計|ロングとショートで変える理由とパラメータの決め方で扱います。ただし同記事の例BはロングRSI30〜50、ショート40〜55で、本記事の例Aとは別の条件セットです。両記事を混ぜて一つの実運用ルールと解釈しないでください。
ショート候補のスクリーニング手順
ショートでは「下落傾向の中で一時的に戻した銘柄」を確認する、という目的を置きます。例Aでは出来高とATR%の条件をロングと共通にし、MAの順序とRSI帯域を変えます。これは説明用の組み合わせで、ロングの鏡像にする案とどちらが有効かは、結果を検証しなければわかりません。
トレンドフィルタの反転
SMA200 > EMA50 > EMA20
ロングと逆の上下の順序です。これだけでは各線の下向きや、戻りの終了は確認できません。例Aのショートでは「終値がSMA200より下」も別に確認し、価格の動きと各線の傾きを見ます。
RSI帯域はロングとは別の例として試す
RSI(14):50〜65の範囲
例Aのロングは35〜55、ショートは50〜65です。35〜55を50中心に反転すると45〜65になるため、この設定は完全な鏡像ではありません。50〜65の方が有効だという検証結果は示していません。RSIだけで「戻りすぎ」や下落再開を決めず、価格の動きを確認します。
別の帯域との比較や検証方法はスクリーニング条件の設計を参照してください。
ショート特有の注意:利用口座で信用売りの可否を確認する
信用売りの可否は、制度信用・一般信用の区分、証券会社の取扱い、株券の調達状況や売建可能数量、取引規制で変わります。貸借銘柄かどうかだけで空売り全般の可否は判断できません。一般信用でも証券会社が選定した銘柄を売建できる場合があります。利用口座の銘柄画面で、新規売建の可否と数量、返済期限、貸株料などの費用を確認してください。
スクリーニング結果の一次チェック
スクリーナーの数値フィルターを通過した銘柄は、まだ「候補」です。ここからチャートを開いて、1銘柄ずつ形を確認します。
一次チェックでは、少なくとも次の2点を確認します。発注前には流動性、数量、損失想定、信用売りの条件なども別に確認します。
チャートの形が「出そう」かどうか。 数値条件は通っていても、チャートを見ると方向感がない、レンジの真ん中で動きがない、という銘柄は外します。スクリーナーは「数値」を見ていますが、実際のエントリー判断は「形」で行います。
直近で材料が出ていないか。 決算発表の直前・直後、重大IRが出ている銘柄は、テクニカルの前提が崩れている可能性があります。スクリーニング結果だけ見ると綺麗な押し目に見えても、決算で大きく動く可能性がある銘柄は別の判断軸が必要です。
一次チェックを通過した銘柄を、監視リストに移します。監視リストでの管理方法——昇格条件、除外条件、エントリーまでの「待ち方」——は監視銘柄リストの作り方|スクリーニングからエントリーまでの「待ち方」で詳しく扱っています。
よくあるスクリーニングの失敗パターン
条件を盛りすぎて候補が0になる
移動平均線、RSI、MACD、ボリンジャーバンド、出来高…全部入れたくなる気持ちはわかります。しかし条件を増やすほど、通過する銘柄は激減します。
スクリーニングで大事なのは「完璧な銘柄を見つけること」ではなく、「明らかに違う銘柄を排除すること」です。最終判断はチャートを見て自分で行う。スクリーナーに判断まで任せようとすると、条件が増えすぎて何も引っかからなくなります。
出来高フィルタなしで板スカ銘柄に当たる
テクニカル条件は完璧なのに、いざ買おうとしたら板がスカスカで約定しない。あるいは約定したけど想定より不利な価格になった。
出来高フィルタは最初に入れてください。どんなに綺麗なチャートでも、取引できなければ意味がありません。
スクリーニング結果をそのままエントリーする
避けたいのは、条件を通過したことだけを理由にエントリーしてしまうことです。
ここでのスクリーニングは、今後確認する候補を探す作業です。監視リストでは、採用理由、見送る条件、エントリー前に必要な確認を記録します。工程を増やしただけでタイミングの精度や成績が向上するとは限りません。
まとめ
スクリーニングは銘柄選定の入口です。TradingViewの株式スクリーナーで、流動性・トレンド・押し目・ボラティリティの4条件を順に適用して候補を絞り込む。
ただし、スクリーニングで見つけた銘柄は「候補」であり「答え」ではありません。候補をどう管理してエントリーにつなげるかは、スクリーニングとは別の仕事です。
次に読む
- 条件の「なぜ」を理解する → スクリーニング条件の設計|ロングとショートで変える理由とパラメータの決め方
- 候補の管理とエントリー判断 → 監視銘柄リストの作り方|スクリーニングからエントリーまでの「待ち方」
- スイングトレードの全体設計 → スイングトレードで月利10を目指す|銘柄選び・仕掛け・損切りの現実的ルール
指標・制度の確認資料
以下の公式資料を2026年9月16日に確認しました。指標の計算や制度を確認する資料であり、この記事の具体的な閾値の利益や勝率を示すものではありません。
TradingView:株式スクリーナーの機能 / TradingView:ATRの定義とフィルター / TradingView:ATR%の計算 / TradingView:RSIの定義 / JPX:信用取引の種類と対象銘柄(Q4・Q5) / 楽天証券:一般信用取引「無期限」

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