「ドローダウンと連敗の管理」で、DDの概念と縮小ルールは書いた。 でも、あれは「考え方」の話。
ここでは「実装」の話をする。
損失を点検する方法として、日次の損失基準と資金曲線の基準を比べる。どちらが適するかは保有期間だけでは決まらない。特に、確定損益の資金曲線で完全停止する場合は、停止中に再開条件を観測する仕組みが別に必要になる。
DDストップの2つの型
デイリーストップ(1日単位の損失上限)
その日の損失が事前の基準を超えたら、新規注文を止める方法。発注回数を制限する用途には使えるが、既存建玉の損失や翌日の窓開けまで上限内に抑えられるわけではない。
スイングでも日次の評価損益や総建玉リスクは確認できる。ただし含み損益を含めるか、取引停止だけか決済もするかで効果が変わる。日次基準と取引ごとの資金曲線は観測対象が異なる。
エクイティカーブストップ(資金曲線ベースのストップ)
自分の資金曲線——エクイティカーブ——に移動平均線を引く。カーブがMAを下回ったら、新規エントリーを停止する。あるいはロットを縮小する。
対象は銘柄価格ではなく自分の損益。MAの上下は過去の系列に対する位置を示すだけで、手法が将来も有効か無効かを確定するものではない。
取引単位で記録すると、決済ごとの結果とルール違反を対応させやすい。一方で、決済していない建玉の含み損はこの曲線に現れないため、口座の評価残高も併せて管理する。
取引単位と日次単位を混同しない
同日に複数の取引を決済すれば、20取引の窓は短期間で進む。逆に決済がなければ更新されない。20取引を20日や数週間と読み替えない。
入出金は利益ではない。確定損益の系列では手数料・金利などを控除し、評価残高を使う系列では入出金を調整する。異なる定義の曲線をつなげない。
例として確定した各取引の純損益を累積し、その累積値20個のSMAを計算する。この20は検証用の設定で、最適値と確認されたものではない。
MA割れが起きたら、規則違反、取引対象の偏り、売買コスト、通常のばらつきを確認する。単に平均を下回っただけで、相場との不適合が証明されたとは扱わない。
日次の損失基準、資金曲線の基準、個別建玉の出口は別のルールとして併用できる。複数の基準が同時に触れた場合に、どの注文を止め、何を決済するかを先に決めておく。
エクイティカーブストップの設計
MAの種類と期間
SMAとEMAのどちらが切替回数を減らすかは系列次第。ここでは計算を追いやすいSMAを例にする。違う平滑化を比べるなら同じ取引記録とコストで検証する。
20〜30取引は候補となる窓の例。期間を短くすれば通常は直近の結果の影響が大きくなるが、停止が早いほど最終損益が良くなるとは限らない。比較期間と評価方法を先に固定する。
トリガー条件
運用は二つに分ける。縮小運転なら実取引の新しい損益を記録し続けられる。完全停止なら確定損益の列は止まるため、「同じ曲線がMAを再び上回るまで待つ」だけでは再開できない。
縮小率50%などは設定例で、残る建玉の損失は続き得る。数量変更だけでも金額ベースの曲線の動きが変わるため、1取引の予定リスクで割ったRも別列で比較する。
完全停止中は、事前ルールに従う模擬取引を別系列として記録する方法がある。実損益に混ぜず、約定仮定、手数料、スリッページを明記する。実際の約定を再現できない点も残す。再開は、例えば週次レビューで規則と執行条件を確認して少額から行い、模擬曲線の上抜けだけで決めない。
kView Diamondとの連携
利用している損益管理サービスのレポートでは、確定損益か評価損益か、集計日と手数料の扱いを先に確認する。サービスの名称だけでこのルールが自動実装されるわけではない。
日次〜トレード単位で管理するなら、スプレッドシートが現実的。トレード結果を毎回記録して、累積損益の列を作り、そこにSMA(20)を引く。Googleスプレッドシートなら関数1行で出る。チャートで可視化すれば、カーブとMAの関係が一目で見える。
実装テンプレ
ステップ1. 決済ごとに日時、取引ID、費用控除後損益、当初の予定リスク、規則逸脱を記録する。累積損益は前回累積+今回純損益で更新する。
ステップ2. 累積損益にSMA(20トレード)を引く。直近20トレードの累積損益の平均値。スプレッドシートなら =AVERAGE(範囲) で出る。
ステップ3. ルールを設定する。
- 縮小運転:確定損益とRを継続記録し、復帰の評価日・必要な観測数を事前に決める。
- 完全停止:実損益は更新されない。模擬取引を別表で記録し、週次などの所定日に再開条件を審査する。
- 既存建玉:新規停止とは別に、個別の出口と口座全体のリスク基準で管理する。
- 再開後の数量:70%などを採るなら設定例として記録し、変更理由を残す。損失がその割合に限定される保証はない。
ステップ4. 停止しなかった場合の仮想記録と実際の結果を区別してレビューする。ルール改訂は、改訂前の成績を消さずに別の版として始める。将来のデータを見て停止条件を都合よく変える検証は避ける。
よくある疑問
Q. エクイティカーブストップ中に大相場が来たら?
停止中に上昇機会を逃すことはある。一方、停止が将来のリターンを改善するかは、この設計だけでは分からない。回避できた損失と失った利益の両方を、同じ約定仮定で比較する。
Q. 月間DD停止ルール(概論記事)との併用は?
併用は可能。月初からの損益と、過去の残高ピークからのDDは別なので定義をそろえる。−8%や−10%は設定例にすぎず、持越しや約定のずれで基準を超える場合も想定する。
Q. ショートにも使える?
売買方向別にも集計できる。ただし少数の取引では差が偶然で生じる。全体、ロング、ショートの件数・コスト・予定リスクを併記し、一方が有効と早合点しない。
まとめ
資金曲線は、停止の根拠と再開の観測方法を一緒に設計する。
日次基準と取引単位の基準には異なる役割がある。含み損を見落とさず、入出金や費用の扱いをそろえる。
完全停止した確定損益の曲線は更新されない。模擬系列と実損益を分け、定めたレビュー時点で再開を判断する。
この方法は損失を保証付きで限定する仕組みではなく、運用状態を点検し記録するための設計例だ。採用前に停止の有無を同条件で比較する。

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