チャートを見るとき、多くのトレーダーは「価格」と「出来高」を見ています。
しかし、もう一つ重要な要素があります。
「時間」です。
同じ1,000円という価格でも:
- 30分区切りのある価格帯で、1区間だけ価格が到達した。
- 同じ価格帯へ4つの時間区間で価格が到達した。
この違いを、価格帯ごとのTPOブロック数で表します。滞在した秒数を直接測るものではありません。
TPO(Time Price Opportunity)は、「価格」と「時間」の関係を視覚化した分析手法です。
一定の時間区分ごとに、どの価格帯へ価格が到達したかを数えます。
出来高とは異なる集計ですが、参加者の意図や適正価格を直接観測することはできません。
本記事では、TPO分析の基本概念と読み方を解説します。
【この記事でわかること】
・TPOとは何か、なぜ「時間」を見るのか
・マーケットプロファイルの基本構造
・バリューエリア、POCの意味と見方
・TPOを使ったサポート
・レジスタンスの考え方
TPOの基本概念
TPOを理解するには、まず「マーケットプロファイル」という分析手法を知る必要があります。
マーケットプロファイルとは
マーケットプロファイルは、1980年代にシカゴ商品取引所(CBOT)のJ・ピーター・スタイドルマイヤー氏によって開発されました。
通常の時間軸チャートに加えて、価格帯ごとの時間区分の重なりを見る発想です。
しかしスタイドルマイヤー氏は、「価格がどう動いたか」だけでなく「どの価格帯でどれだけの時間、取引されたか」が重要だと考えました。
その発想から生まれたのが、マーケットプロファイルです。
TPOの意味
TPOは「Time Price Opportunity」の略です。
- Time:区切った時間区間。
- Price:設定した幅の価格帯。
- Opportunity:その時間区間に価格帯を通ったことの記録。約定件数ではない。
一定時間ごとに、どの価格帯で取引が行われたかを記録していきます。
TradingViewの既定例では1区間30分ですが、設定で変更できます。同じ区間に同じ価格帯を何度往復しても、TPOはその区間の1ブロックです。
・9:00〜9:30 → A
・9:30〜10:00 → B
・10:00〜10:30 → C
縦を価格帯、横をその価格帯に対応した時間区間のブロック数として並べます。行の幅と区間の長さを変えると形も変わります。
時間区分を数える理由と限界
複数の時間区間で到達した価格帯はTPOが増えます。人数や売買株数が増えたとは限りません。
同じ30分区間で一度通過した価格帯と何度往復した価格帯が、どちらも1TPOになる場合があります。
そのためTPOを参加者の「合意」と表現するのは解釈であって、測定事実ではありません。
観測できるブロック数と、その後の価格反応を分けて検証します。
TPOチャートの読み方
TPOチャートには、いくつかの重要な概念があります。
バリューエリア(Value Area)
TPOのバリューエリアは、指定した割合(既定70%)のTPOブロックを含むよう、POCを起点に算出する価格範囲です。約定件数・出来高・一日の時間の70%ではありません。
70%は設定値で、適正価値や正規分布を実証する数値ではありません。集計が離散的なので、含まれる割合は設定値を超えることもあります。
・バリューエリアの上限 → VAH(Value Area High)
・バリューエリアの下限 → VAL(Value Area Low)
範囲内にあるとは、選んだ期間と設定で算出したVAの中に価格があるという意味です。
範囲外へ出ても、その方向への継続や市場全体の価値判断は確定しません。
POC(Point of Control)
TPOのPOCは、ブロック数が最も多い価格行です。出来高プロファイルのPOC(最も出来高が多い行)とは区別します。
複数の時間区分で到達したという情報で、投資家の平均取得価格ではありません。
支持・抵抗の候補として観測することはできますが、反発を保証する水準ではありません。
TPOから取引量や保有者の建値を復元することはできません。
シングルプリント
シングルプリントは、1つのTPOしか記録されなかった価格帯です。
その行が一つの時間区間で記録されたことを示します。滞在が何秒だったか、誰かが価格を拒否したかは分かりません。
シングルプリントも、その期間の記録の一種です。
再到達後に速く通過するか反転するかは別の観測として扱います。いずれかが多いと結論づけるには対象・期間を決めた検証が必要です。
TPOが教えてくれること
TPOを見ることで、価格チャートだけでは見えない情報が得られます。
ブロックの多寡から分かること
- 多い行:複数の区間で価格が到達した。
- 少ない行:到達した区間が少なかった。
- 分からないもの:参加人数、保有建値、将来の反発方向。
観測範囲を限定すれば、出来高や現在の注文板と混同せずに利用できます。
トレンドの「質」
上昇トレンドでも、その「質」は様々です。
- VAが上へ移る:設定した期間内のTPO分布が上へ移った。
- 価格だけが上へ動く:現在値と分布に差がある。持続性はまだ分からない。
この違いを記録し、その後の値動きで仮説を確かめます。
時間という「重み」
出来高は「何株取引されたか」を教えてくれます。
TPOは、どの時間区間で価格帯へ到達したかを数えます。
この2つは似ているようで違います。
出来高が少なくTPOが多い組合せもあり得ます。それを参加者の納得や次の速い動きの証拠にはしません。
出来高とTPOの両方を見ることで、より立体的な分析が可能になります。
実践での活用法
TPOの概念を理解したところで、実際のトレードにどう活かすかを見ていきましょう。
前日のPOCをサポート・レジスタンスとして使う
前日のPOCは、前日の設定に基づくTPO最多行です。
翌日、価格がこのPOCに近づいたとき:
- その水準へ近づいた時刻と方向を記録する。
- 反発・通過・未到達を同じ基準で分類する。
- 上抜けや下抜けだけで新トレンドの始まりとは決めない。
例えば終値でPOC上へ戻ることを採用条件にするなら、後からその日のPOCを使わず、当時分かっていた水準を用います。
バリューエリアのブレイクを狙う
VA外へ価格が出たことを、観測上の区切りとして扱う方法があります。
- VAHの上か、VALの下かを記録する。
- 何本の確定足で外にとどまることを求めるか、注文前に決める。
ただし、ブレイク後にすぐバリューエリア内に戻ってきた場合は、ダマシの可能性があります。
ブレイク後、バリューエリアの外で「定着」するかどうかを確認しましょう。
シングルプリントを目標値に使う
シングルプリントの位置を観測候補にすることはできます。
ただしその価格帯への到達確率や、その後の通過速度をTPOだけで知ることはできません。
利確の目標値として使うことができます。
出来高と組み合わせる
TPOは「時間」、出来高は「取引量」。
組み合わせれば必ず精度が上がるわけではありません。それぞれ何を数えた指標かを記録します。
- TPOが多く出来高も多い:時間区分の重なりと取引量がともに大きい。
- TPOが多く出来高が少ない:時間区分の重なりに対して取引量は少ない。
- どちらも現在の指値注文の厚さや、将来の反発を保証しない。
次の記事で解説する「出来高フットプリント」と組み合わせると、さらに立体的な分析ができるようになります。
次の記事:出来高フットプリント
さらに、VWAP・TPO・フットプリントの“見る順番”を固定した環境テンプレ → 出来高・検証テンプレ(玄人)
まとめ:価格だけでなく「時間」を見る
TPOは、設定した時間区分と価格行で価格の到達を集計する方法です。
この記事のポイント
- 区間の長さ、価格行の幅、対象セッションを固定する。
- TPOのVAはTPOブロックの割合。出来高VAとは別。
- POCは最多ブロックの行で、保有者の建値ではない。
- 未確定の期間ではPOC・VAが変わるため、当時の状態を保存する。
価格チャートは「何が起きたか」を教えてくれます。
TPOは価格帯ごとの時間区分の重なりを教えてくれます。
その情報で何が改善したかは、同じ条件・費用で比較して確認します。
確認に使った一次資料
制度・仕様の確認日:2026年9月28日。各資料の適用条件と、本文中の筆者の経験・仮定例は分けて記載しています。

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