ATRという指標を知っているだろうか。
Average True Range。
日本語にすると「真の値幅の平均」
相場のボラティリティを数値化した指標だ。
派手な指標ではない。
売買シグナルを出すわけでもない。
ただ、相場の「呼吸」を測るツールとして、知っておくと便利な場面がある。
ATRとは何か
ATRは、一定期間の値動きの幅を平均化したもの。
たとえばATRが50円なら、その銘柄は1日に50円くらい動くのが普通、ということになる。
100円動いたら「いつもより大きい動き」、30円しか動かなければ「今日は静か」と判断できる。
計算方法は少し複雑だけど、TradingViewや証券会社のツールなら自動で表示される。
計算式を覚える必要はない。
大事なのは、ATRが示す数字の意味を理解すること。
「この銘柄の普通の値動きはこのくらい」という基準を持てるようになる。
「呼吸」として見る
筆者はATRを、相場の呼吸として捉えていた。
人間に呼吸があるように、相場にも普段の値動きの幅がある。
その範囲内で動いているうちは、正常な状態。
でも、ATRを大きく超えて動いたときは、何か異常が起きているサインかもしれない。
たとえば、ATRが50円の銘柄が、1日で100円下がった。
普段の呼吸幅の2倍。
これは「いつもと違う」動きだと判断できる。
筆者は、ATRを超えた値幅で動いたとき、ポジションを切る判断材料にしていたことがある。
「普通じゃない動きが出た」と感じたら、一度離れる。
そういう使い方だ。
逆張りの目安として
ATRは、逆張りエントリーの目安にもなる。
ATRを超えて下げた場面。普段の呼吸を超えた下落。
こういうときは「下げすぎかもしれない」と考えて、エントリーを検討することがあった。
ただし、これはあくまで目安であって、ATRを超えたから必ず反発するわけではない。
トレンドが強ければ、ATRの2倍、3倍と下げ続けることもある。
「下げすぎかも」と思ったら、他の指標やチャートパターンと合わせて判断する。
ATR単体で飛び乗るのは危険だ。
正直なところ
教科書的には、「損切りはATRの2倍」とか「利確はATRの3倍」とか、具体的な数値を決めましょうと書いてある。
でも正直、筆者はそこまで厳密にやっていなかった。
ATRを見て、「だいたいこのくらいが普通の動き」という感覚を持っておく。
その範囲を明らかに超えたら、何か起きてると判断する。それくらいの使い方だった。
数値をきっちり決めた方がいい人もいるし、感覚的に使う方が合う人もいる。
どちらが正解ということはない。
自分のトレードスタイルに合った使い方を見つければいい。
他の指標との組み合わせ
ATRは単体で使うより、他の指標と組み合わせた方が効果的だ。
ボリンジャーバンドと一緒に見れば、バンド幅とATRの両方からボラティリティを確認できる。
RSIと組み合わせれば、「下げすぎ+ATR超え」でより根拠のある逆張りができる。
ATRは万能な指標ではない。
でも、「今の相場がどのくらい動いているか」を客観的に知るツールとしては、シンプルで使いやすい。
派手さはないけれど、相場の呼吸を知る——それがATRの本質だと思う。

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