フィボナッチ・リトレースメント。
名前だけは聞いたことがある人も多いと思います。
海外のトレーダーやFXの世界では定番の指標で、「押し目」や「戻り」の目安として使われています。
38.2%、50%、61.8%といった数字が有名です。
ただ、日本の株式市場では、正直あまり見かけない。
移動平均線や一目均衡表の方がずっとメジャーです。
筆者自身、フィボナッチは使っていません。
チャートに色をつけて見やすくする程度には使えるかもしれないけど、サポートやレジスタンスとして機能している実感がない。それが正直なところです。
この記事では、フィボナッチ・リトレースメントの基本的な考え方と、なぜ筆者が使っていないのかを書いていきます。
フィボナッチ数列とは
フィボナッチ・リトレースメントの「フィボナッチ」は、13世紀イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチに由来します。
フィボナッチ数列というのは、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55…と続く数列。
前の2つの数字を足すと次の数字になる、というシンプルなルールです。
この数列には不思議な性質があって、隣り合う数字の比率が、数列が進むにつれて約0.618に収束していく。
この0.618という数字は「黄金比」と呼ばれていて、自然界のいろんなところに現れると言われています。
ひまわりの種の配列、貝殻の螺旋、人体の比率…そういったものにフィボナッチ比率が隠れている、という話は聞いたことがあるかもしれません。
トレードの世界では、「相場も自然現象の一つだから、フィボナッチ比率が機能するはずだ」という発想で使われています。
リトレースメントの使い方
フィボナッチ・リトレースメントは、トレンドの「押し目」や「戻り」がどこで止まるかを予測するために使います。
上昇トレンドの場合、直近の安値から高値までの値幅に対して、23.6%、38.2%、50%、61.8%、78.6%といったラインを引く。
価格が下落してきたとき、これらのラインで反発するかもしれない、という考え方です。
下降トレンドの場合はその逆で、高値から安値までの値幅に対してラインを引いて、戻りの目安にします。
特によく使われるのは38.2%、50%、61.8%の3つ。
浅い押し目なら38.2%、深い押し目なら61.8%、その中間が50%、といった具合です。
TradingViewなどのチャートツールには、フィボナッチ・リトレースメントを簡単に引ける機能がついています。
高値と安値を指定するだけで、自動的にラインが表示される。使い方自体は難しくありません。
海外では人気、日本ではマイナー
フィボナッチは、海外のトレーダーやFXの世界ではかなりメジャーな指標です。
英語圏のトレード本やYouTubeを見ると、フィボナッチを使った手法がたくさん紹介されている。
特にFXでは、通貨ペアの押し目買いや戻り売りの目安として、日常的に使われているようです。
一方、日本の株式市場では、あまり見かけません。
日本では一目均衡表や移動平均線、ボリンジャーバンドといった指標の方がメジャーで、フィボナッチを前面に出したトレード手法はあまり聞かない。
証券会社のレポートでも、フィボナッチが登場することは稀です。
この差がなぜ生まれるのかはわかりませんが、文化的な違いなのかもしれません。
筆者が使っていない理由
筆者はフィボナッチを使っていません。
理由はシンプルで、サポートやレジスタンスとして機能している実感がないからです。
38.2%や61.8%のラインを引いてみても、そこで反発することもあれば、素通りすることもある。
「たまたまそこで止まっただけでは?」という疑問が拭えない。
もちろん、フィボナッチを使って結果を出しているトレーダーもいます。
特にFXの世界では、多くの人がフィボナッチを見ているから、自己実現的にそのラインが意識される、という面もあるのかもしれません。
ただ、日本株をメインにトレードしている筆者にとっては、フィボナッチを見ている人が少ない以上、そのラインが機能する理由がない。
それなら、より多くの人が見ている移動平均線や出来高を重視した方が、実践的だと感じています。
知識として知っておく価値
使っていないとはいえ、フィボナッチの存在を知っておく価値はあります。
海外勢が日本市場に参入してきたとき、彼らがフィボナッチを見ている可能性はある。
FXや先物をやるなら、フィボナッチは避けて通れない指標です。
また、チャートに視覚的な目安を入れるという意味では、使い道がないわけではない。
「このあたりまで押したら買いを検討しよう」という目安として、なんとなく色をつけておく程度なら、悪くないかもしれません。
自分が使わなくても、世界のどこかで誰かが見ている。
——その程度の距離感で、引き出しに入れておけばいいと思います。

コメント