パラボリックSARという指標がある。
チャート上に点が並んで、価格の上か下に表示される。
点が下にあれば上昇トレンド、上にあれば下降トレンド。
点の位置がひっくり返ったら、トレンド転換のサイン。
見た目はシンプルでわかりやすい。
だからこそ、一度は試してみたくなる指標だと思う。
筆者も使っていた時期がある。
結論から言うと、今は使っていない。
仕組みはシンプル
SAR は「Stop And Reverse」の略。
止まって反転する、という意味だ。
点がローソク足の下に出ている間は、上昇トレンドと判断する。
点が上に移ったら、トレンドが下降に転換したサイン。
ドテンのタイミングを教えてくれる指標、というのが基本的な考え方だ。
計算式は複雑だけど、TradingViewや証券会社のツールなら一発で表示される。
覚える必要はない。
得意な相場、苦手な相場
パラボリックSARには、はっきりとした得意・苦手がある。
得意なのは、大きくてなめらかなトレンドが続く相場。
方向感がはっきりしていて、押し目や戻りが浅い展開。
こういう相場なら、点について行くだけでトレンドに乗れる。
苦手なのは、細かく上下する相場、レンジ相場、そして窓開けが多い相場。
こういう場面では、だましが頻発する。
実際に使ってみて
筆者がパラボリックを使っていたとき、一番困ったのはレンジ相場だった。
点が上に行ったり下に行ったり、コロコロ転換する。
そのたびにドテンしていたら、往復ビンタを食らって損失が積み重なる。
もう一つ厄介だったのが、上昇トレンド中の調整局面。
上昇トレンドの途中で、調整の下げが入る。
パラボリックはその調整で「下降転換」のサインを出す。
ところが、調整が終わって再び上昇し始めたところで、また転換サインが出る。
結果、調整中に売らされて、本当の上昇が始まるところで買い直すことになる。
一番おいしい部分を取り逃がすパターンだ。
後追いになる
パラボリックに限らず、トレンド系の指標は基本的に後追いになる。
価格が動いてから、指標が反応する。転換サインが出たときには、すでにある程度動いた後。
そこから乗っても、残りの値幅が少ないことがある。
大きなトレンドが続けば問題ない。
でも、すぐに反転されると、後追いで入って、また後追いで切らされる。
この「後追い」という特性を理解した上で使わないと、振り回されることになる。
使うのをやめた理由
結局、筆者はパラボリックを使うのをやめた。
理由はシンプルで、だましが多かったから。
そして、得意な相場——大きくてなめらかなトレンド——が、そんなに頻繁には来なかったから。
使えないわけではない。
相場環境を選べば、機能する場面もある。
でも、その「相場環境を選ぶ」という判断自体が難しい。
パラボリックが得意な相場かどうかを判断できるなら、そもそもパラボリックがなくてもトレードできる。
そう考えて、他の指標を使うようになった。
合う人、合わない人
パラボリックが合う人もいると思う。
大きなトレンドを狙うスイングトレードで、だましを許容できる資金管理ができる人。
細かい勝率より、一発の値幅を取りに行くスタイルの人。
逆に、レンジ相場が多い銘柄を触る人、短期で細かく取りたい人には向かないと思う。
指標に良し悪しはない。
自分のスタイルに合うかどうかだけ。
筆者には合わなかった、というだけの話だ。
シンプルで魅力的に見える指標ほど、実際に使ってみると難しい——パラボリックSARは、そのことを教えてくれた指標だった。

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