ADXという指標がある。
Average Directional Index。日本語では「平均方向性指数」と訳される。
トレンドの強さを数値化する指標だ。
筆者は使っていない。
ただ、知識として知っておいて損はない指標だと思うので、紹介しておく。
何を測る指標か
ADXは、トレンドの「強さ」を測る。
注意してほしいのは、「方向」ではなく「強さ」という点だ。
ADXが高ければ、トレンドが強い。
上昇トレンドでも下降トレンドでも、方向に関係なく、トレンドがはっきりしていればADXは上がる。
ADXが低ければ、トレンドが弱い。
レンジ相場や方向感のない相場では、ADXは低くなる。
一般的には、ADXが25以上でトレンドあり、20以下でトレンドなし、と言われる。
ADXとDMI
ADXは、実は「DMI(Directional Movement Index)」という指標の一部だ。
DMIは3本のラインで構成されている。
+DI(プラスDI)が上昇の勢い、-DI(マイナスDI)が下降の勢い、そしてADXがトレンドの強さを示す。
TradingViewで「ADX」と検索すると、ADX単体だけを表示するインジケーターが出てくることがある。
+DIと-DIも一緒に見たい場合は、「DMI」や「Directional Movement Index」で検索すると、3本のラインが表示されるインジケーターが見つかる。
+DIが-DIより上にあれば上昇優勢、-DIが+DIより上にあれば下降優勢。
この2本のクロスでトレンド転換を判断する使い方もある。
ADXはこの+DIと-DIの差から計算されていて、両者の差が大きいほど、ADXは高くなる。
教科書的な使い方
教科書的には、こんな使い方が紹介されている。
ADXが25を超えてきたら、トレンドが発生したと判断してトレンドフォローを狙う。
ADXが20以下なら、レンジ相場と判断して逆張りや様子見。
+DIと-DIのクロスでエントリー方向を決める。
理屈としては筋が通っている。
使わなかった理由
筆者がADXを使わなかった理由は、シンプルだ。
トレンドの強さがわかっても、それでどうするか、という部分が悩ましかった。
たとえば、ADXが30で「トレンドが強い」とわかる。
でも、それが上昇トレンドなのか下降トレンドなのかは、ADXだけではわからない。
+DIと-DIを見ればわかる、という話だが、それなら最初から移動平均線やローソク足でトレンドの方向を見た方が早い。
筆者が知りたかったのは、トレンドの強さより方向性だった。
「今、上なのか下なのか」「ここから上に行きそうか下に行きそうか」——トレードで実際に必要なのは、こっちの情報だと感じていた。
強さを測っても、方向がわからなければエントリーできない。
方向を知るために結局別の指標を見るなら、ADXを経由する意味が薄い。
そう考えて、使わないままになった。
合う人もいる
ADXが合う人もいると思う。
トレンドフォロー戦略を徹底していて、「トレンドがないときは絶対にエントリーしない」というルールを持っている人。
レンジ相場を避けるフィルターとしてADXを使う、という考え方なら、意味がある。
また、システムトレードやアルゴリズムを組む人にとっては、「トレンドの有無」を数値で判定できるのは便利だろう。
裁量トレードでは感覚で判断する部分を、数値化できる。
ただ、裁量トレードで、チャートを見て判断するスタイルなら、ADXがなくても困らないことが多いと思う。
知識として持っておく
使わないからといって、知らなくていいわけではない。
ADXという指標がある、トレンドの強さを測るものだ、DMIの一部だ、という知識があれば、他のトレーダーの話や解説記事を読むときに理解が早くなる。
自分で使うかどうかは、試してみて決めればいい。
合う人には合う。
筆者には合わなかった。
それだけの話だ。
トレンドの強さか、方向か——何を知りたいかで、選ぶ指標は変わる。

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