「セクターローテーション|資金の流れを読む」で、セクターの考え方と観察の視点は書いた。資金は常にどこかのセクターに流れている。それを読むことが大事だと。
ただ、「同じセクターの銘柄が揃って強いと感じたら」では、実際のトレードで判断がブレる。感じ方は日によって変わるし、人によっても変わる。
この記事では、スクリーナーを使ってセクターの強弱を数値で判定する方法を書く。感覚ではなく、条件で判断する。
なぜ「数値化」が必要なのか
「セクターが強い」とは、具体的にどういう状態か。
答えはシンプルで、そのセクターに属する銘柄のうち、上昇トレンドにある銘柄の数が多い状態。銀行セクターの中で、上昇トレンドの銘柄が12社あるのか3社なのかで、セクターへの資金流入の度合いは全然違う。
この「何社あるか」を数えるのが、数値化の本質。スクリーナーに上昇トレンドの条件を入れて、結果をセクター別にカウントするだけ。それだけで「感じる」が「測る」に変わる。
しかも、毎週カウントすれば変化が追える。先週8社だったのが今週12社なら、そのセクターに資金が加速的に流入している。先週5社だったのが今週2社なら、資金が抜けている。セクターローテーションの「初動」が数字で見えるようになる。
スクリーナーでセクター強弱を測る手順
ステップ1:ベースのスクリーナー条件を設定する
ロングのスクリーナー条件をそのまま使う。セクターフィルタだけ外して、全銘柄を対象にかける。
| 条件 | 値 | 目的 |
|---|---|---|
| EMA20 > EMA50 > SMA200 | — | 上昇トレンドの構造確認 |
| RSI(14) | 45〜65 | 過熱していない帯域 |
| ATR(14) | 1.8%〜2.6% | 適度なボラティリティ |
| 価格 × 平均出来高(30日) | > 300M JPY | 流動性フィルタ |
条件の根拠はスクリーニング系の記事で書いてあるから、ここでは省略する。大事なのは、この条件に引っかかる銘柄のリストを「セクター判定の母集団」として使うこと。
ステップ2:セクター別に集計する
TradingViewのスクリーナーなら、結果をセクター(業種)でフィルタできる。引っかかった銘柄を東証の業種分類で分けて、セクターごとの該当銘柄数をカウントする。
例えば、こんな結果が出たとする。
| セクター | 該当銘柄数 |
|---|---|
| 銀行 | 12 |
| 保険 | 8 |
| 電気機器 | 6 |
| 医薬品 | 3 |
| 不動産 | 2 |
該当数が多いセクターに、上昇トレンドの銘柄が集中している。つまり、そこに資金が流入している。
ただし、セクターによってそもそもの上場銘柄数が違う。銀行セクターの上場数が多ければ、該当数も多くなりやすい。気になるなら「該当数 ÷ セクター内の上場数」で比率を出してもいいが、実用上はカウントの多寡だけで十分判断できる。細かい比率を毎週計算するのは手間に対して効果が薄い。
ステップ3:前週との比較で「変化」を見る
ここが一番大事。先週のカウントと今週のカウントを並べる。
| セクター | 先週 | 今週 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 銀行 | 8 | 12 | +4(加速) |
| 保険 | 6 | 8 | +2(堅調) |
| 電気機器 | 7 | 6 | -1(横ばい) |
| 不動産 | 5 | 2 | -3(資金流出) |
「今どこが強いか」だけでなく「どこが強くなりつつあるか」が見える。ローテーションは突然起きるのではなく、数週間かけてじわじわ進む。変化の方向を追うことで、初動を捉えやすくなる。
記録はスプレッドシートに週1回、スクリーナーの結果をセクター別にカウントして書き込むだけ。5分で終わる。
実例:金融セクターの強弱判定
ぼくは金融セクター(銀行・保険)をポートフォリオの中心に置いている。理由は構造的なテーマがあるから。
日銀の利上げ期待が続いている。金利が上がると、銀行は貸出利鞘が改善し、保険会社は運用利回りが上がる。この構造的な追い風が続く限り、金融セクターには資金が入りやすい。
実際にスクリーナーを回すと、金融セクターの該当銘柄数は他のセクターより常に多い。これが「構造的な資金流入が継続している」ことの数値的な裏付けになっている。
2月は金融セクターが特に強い月だった。スクリーナーの該当銘柄数が週ごとに増加していて、セクター全体で上昇トレンドの銘柄が揃っていた。こういう月は、セクター内のどの銘柄を選んでも勝ちやすい。逆にセクター全体が弱い時期に、その中から1銘柄だけ拾おうとするのは効率が悪い。
セクター全体が強いことを確認した上で、個別銘柄はスクリーナーの条件(ATR・出来高・RSI帯域)でさらに絞り込む。セクター選定→銘柄選定の二段階。この順番が大事で、逆にすると「銘柄は良いのにセクターが弱くて沈む」という事故が起きる。
セクター判定の限界と注意点
東証の業種分類は33業種ある。33全部を毎週追うのは非現実的だし、細かすぎるとセクターあたりの銘柄数が分散してノイズが増える。
実用的には、自分でグルーピングして10〜15のセクターに整理するのがいい。たとえば「銀行・保険・証券」をまとめて「金融」、「電気機器・精密機器・情報通信」をまとめて「テクノロジー」のように。自分のトレード対象に近い粒度で分ければ十分。
小型株が多いセクターでは注意が必要。該当銘柄数が少ないと、1〜2銘柄の個別材料でカウントが大きく振れる。流動性フィルタ(300M JPY以上)を入れてあるのはこのためで、小型株を弾くことでセクター全体の傾向を正確に拾いやすくなる。
もう一つ。セクターの強弱は「方向」を示すが「タイミング」は示さない。「金融セクターが強い」とわかっても、そのセクターの銘柄をいつ買うかは別の判断。エントリーのタイミングは、押し目買い・戻り売りの設計に従う。セクター判定は「どこで戦うか」を決めるものであって、「いつ入るか」は個別銘柄の条件で決める。
逆に、自分のポートフォリオが1つのセクターに偏りすぎていないかのチェックにも使える。金融セクターが強いからといって全ポジションを金融に寄せると、セクター全体が反転したときに一斉にやられる。セクターの強弱を数値で把握していれば、偏りへの感度も上がる。
まとめ
セクターの強弱は「感じる」ではなく「数える」。
スクリーナーで上昇トレンドの銘柄をセクター別にカウントする。該当銘柄数が多いセクターに資金が流れている。前週との比較で、ローテーションの初動を捉える。
セクター判定は「どこで戦うか」を決める仕組み。「いつ入るか」は個別銘柄の条件で決める。この役割分担を崩さないことが、判定を活かすコツだ。

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