チャートを見るとき、多くのトレーダーは「価格」と「出来高」を見ています。
しかし、もう一つ重要な要素があります。
「時間」です。
同じ1,000円という価格でも:
・その価格帯に5分しか滞在しなかった
・その価格帯に2時間滞在し続けた
この2つは、市場にとってまったく違う意味を持ちます。
TPO(Time Price Opportunity)は、「価格」と「時間」の関係を視覚化した分析手法です。
どの価格帯で、どれだけの時間、取引が行われたのか。
これを見ることで、価格チャートだけでは見えない「市場の本音」が浮かび上がってきます。
本記事では、TPO分析の基本概念と読み方を解説します。
【この記事でわかること】
・TPOとは何か、なぜ「時間」を見るのか
・マーケットプロファイルの基本構造
・バリューエリア、POCの意味と見方
・TPOを使ったサポート
・レジスタンスの考え方
TPOの基本概念
TPOを理解するには、まず「マーケットプロファイル」という分析手法を知る必要があります。
マーケットプロファイルとは
マーケットプロファイルは、1980年代にシカゴ商品取引所(CBOT)のJ・ピーター・スタイドルマイヤー氏によって開発されました。
当時、トレーダーたちは価格チャートだけを見てトレードしていました。
しかしスタイドルマイヤー氏は、「価格がどう動いたか」だけでなく「どの価格帯でどれだけの時間、取引されたか」が重要だと考えました。
その発想から生まれたのが、マーケットプロファイルです。
TPOの意味
TPOは「Time Price Opportunity」の略です。
・Time → 時間
・Price → 価格
・Opportunity → 機会(取引が行われた回数)
一定時間ごとに、どの価格帯で取引が行われたかを記録していきます。
通常、30分を1単位(1TPO)として、アルファベットで記録します。
・9:00〜9:30 → A
・9:30〜10:00 → B
・10:00〜10:30 → C
このアルファベットを縦に積み上げていくと、「どの価格帯に、どれだけの時間滞在したか」が視覚的にわかるようになります。
なぜ「時間」が重要なのか
価格が長く滞在した価格帯は、多くの市場参加者が「この価格が妥当だ」と認めた場所です。
逆に、すぐに通り過ぎた価格帯は、「ここは居心地が悪い」と市場が判断した場所。
時間の滞在は、市場参加者の「合意」を表しています。
この「合意」が見えるからこそ、TPOは強力な分析ツールになるのです。
TPOチャートの読み方
TPOチャートには、いくつかの重要な概念があります。
バリューエリア(Value Area)
バリューエリアは、1日の取引時間のうち、約70%の取引が行われた価格帯です。
「市場が認めた適正価格の範囲」と考えることができます。
・バリューエリアの上限 → VAH(Value Area High)
・バリューエリアの下限 → VAL(Value Area Low)
価格がバリューエリア内にあるときは、「市場が納得している」状態。
バリューエリアを抜けたときは、「新しい価値を探しに行っている」状態です。
POC(Point of Control)
POCは、最も長い時間滞在した価格帯、つまり最も多くのTPOが積み上がった場所です。
「その日、市場が最も合意した価格」と言えます。
POCは強力なサポート・レジスタンスとして機能しやすいです。
なぜなら、そこで多くの取引が成立した=多くのトレーダーの建値が集中しているからです。
シングルプリント
シングルプリントは、1つのTPOしか記録されなかった価格帯です。
価格がすぐに通り過ぎた場所であり、「市場が拒否した価格」と解釈できます。
シングルプリントは「空白地帯」のようなもの。
価格が再びその付近に来たとき、素早く通過するか、そこで反転することが多いです。
TPOが教えてくれること
TPOを見ることで、価格チャートだけでは見えない情報が得られます。
市場の「合意」と「拒否」
・TPOが多く積み上がった場所 → 市場が合意した価格
・TPOが少ない場所 → 市場が拒否した価格
この「合意」と「拒否」の構造を理解することで、サポート・レジスタンスの根拠が明確になります。
トレンドの「質」
上昇トレンドでも、その「質」は様々です。
・バリューエリアが上に移動している → 健全な上昇トレンド
・価格は上がっているが、バリューエリアは変わらない → 一時的な上昇
TPOを見ることで、トレンドの「持続性」を判断できます。
時間という「重み」
出来高は「何株取引されたか」を教えてくれます。
TPOは「どれだけの時間、その価格で取引が続いたか」を教えてくれます。
この2つは似ているようで違います。
出来高が少なくても、長時間滞在した価格帯は「静かな合意」がある場所。
出来高とTPOの両方を見ることで、より立体的な分析が可能になります。
実践での活用法
TPOの概念を理解したところで、実際のトレードにどう活かすかを見ていきましょう。
前日のPOCをサポート・レジスタンスとして使う
前日のPOCは、「昨日、市場が最も合意した価格」です。
翌日、価格がこのPOCに近づいたとき:
・POCで反発 → サポート
・レジスタンスとして機能
・POCを明確に抜ける → 新しいトレンドの始まり
多くのトレーダーの建値が集中している場所だからこそ、意識されやすいのです。
バリューエリアのブレイクを狙う
価格がバリューエリアを抜けたとき、それは「市場が新しい価値を探しに行っている」サインです。
・VAHを上抜け → 買いの勢いが強い
・VALを下抜け → 売りの勢いが強い
ただし、ブレイク後にすぐバリューエリア内に戻ってきた場合は、ダマシの可能性があります。
ブレイク後、バリューエリアの外で「定着」するかどうかを確認しましょう。
シングルプリントを目標値に使う
シングルプリントは「空白地帯」です。
価格がシングルプリントに向かって動いているとき、その付近まで到達しやすい傾向があります。
利確の目標値として使うことができます。
出来高と組み合わせる
TPOは「時間」、出来高は「取引量」。
この2つを組み合わせることで、より精度の高い分析が可能になります。
・POC付近で出来高も多い → 非常に強いサポート
・レジスタンス
・TPOは多いが出来高は少ない → 静かな合意、ブレイク時は動きが速い
次の記事で解説する「出来高フットプリント」と組み合わせると、さらに立体的な分析ができるようになります。
まとめ:価格だけでなく「時間」を見る
TPOは、「どの価格帯で、どれだけの時間、取引が行われたか」を視覚化する分析手法です。
この記事のポイント
・TPOは価格と時間の関係を見る
・バリューエリアは市場が認めた「適正価格の範囲」
・POCは最も合意された価格、強いサポート
・レジスタンスになる
・シングルプリントは市場が拒否した価格、素早く通過しやすい
・出来高と組み合わせることで、より立体的な分析が可能
価格チャートは「何が起きたか」を教えてくれます。
TPOは「どこで市場が納得したか」を教えてくれます。
この視点を持つだけで、サポート・レジスタンスの見方が変わり、エントリーの根拠が一段深くなるはずです。

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